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考えさせられる詩

茨木のり子さんの詩。
以前、図書館で詩集を借りて読んだのですが
先日、天声人語で取り上げられていたので
あらためて、調べてみました。

その中で感動した詩を4篇、ご紹介します。

少し長くなりますが
興味のある方はどうぞ・・・

自分の感受性くらい

ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ

倚(よ)りかからず 73歳の作品

もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくはない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある
倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ

わたしが一番きれいだったとき ※茨木さんは15歳で日米開戦を、19歳で終戦をむかえた。

わたしが一番きれいだったとき
街々はがらがらと崩れていって
とんでもないところから
青空なんかが見えたりした

わたしが一番きれいだったとき
まわりの人達が沢山死んだ
工場で 海で 名もない島で
わたしはおしゃれのきっかけを落としてしまった

わたしが一番きれいだったとき
誰もやさしい贈り物を捧げてはくれなかった
男たちは挙手の礼しか知らなくて
きれいな眼差だけを残し皆(みな)発っていった

わたしが一番きれいだったとき
わたしの頭はからっぽで
わたしの心はかたくなで
手足ばかりが栗色に光った

わたしが一番きれいだったとき
わたしの国は戦争で負けた
そんな馬鹿なことってあるものか
ブラウスの腕をまくり卑屈な町をのし歩いた

わたしが一番きれいだったとき
ラジオからはジャズが溢れた
禁煙を破ったときのようにくらくらしながら
わたしは異国の甘い音楽をむさぼった

わたしが一番きれいだったとき
わたしはとてもふしあわせ
わたしはとてもとんちんかん
わたしはめっぽうさびしかった

だから決めた できれば長生きすることに
年とってから凄く美しい絵を描いた
フランスのルオー爺さんのように 


それを選んだ 1966年 

退屈きわまりないのが 平和
 単調な単調なあけくれが 平和

 生き方をそれぞれ工夫しなければならないのが 平和
 男がなよなよしてくるのが 平和
 女が溌剌としてくるのが 平和

 好きな色の毛糸を好きなだけ買える
 眩しさ!
 ともすれば淀みそうになるものを

 フレッシュに持ち続けてゆくのは 難しい
 戦争をやるより ずっと
 見知らぬ者に魂を譲り渡すより ずっと
 けれど
 わたくしたちは
 それを
 選んだ
by teamikiraku | 2014-06-27 15:17 | 日々の事 | Comments(0)

編物メインのブログです。プラス、子育ても仕事も終えて、シニアライフを楽しむ日常と終末に向かっての気持なんかも綴っていきます。


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